ナニワアームズ商藩国

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zoom RSS ナニワ温食缶詰が出来るまで?

<<   作成日時 : 2007/01/13 14:56   >>

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食糧増産命令が下る。
 戦争が近いことが、どこの国の国民にもはっきりと分かっていた。


 ナニワアームズ商藩国・地底湖養殖場。
「えーと、あれがマグロ?」
「カツオです」
「うまそうだよね」
「食べちゃ駄目ですよ」
 けけと守上のやりとりをジト目で見る蘭堂。手元のコンソールで出荷できそうな魚を、加工工場へと送っていく。
「あれは?」
「あっちは川魚の水槽ですから・・・ニジマスかなあ」
「・・・塩焼き」
「だから食べちゃ駄目ですって」
 のんきだなあこの人たちは、今がどういう状況なのか分かっているのかな。などと思いつつも、さらに魚を選別していく。
稚魚から育てた魚は第一槽から順番に移され、この最終槽で出荷にふさわしいサイズまで育てられる。
「・・・なんで、普段は自動判断なのに・・・」
「それはね」
 ぼやいた蘭堂の背後に素早く回って、サターンが言った。驚いて振り返る蘭堂。
「成長速度倍モードで早期出荷する場合、出荷判断するシステムが当てにならないからです」
「はあ・・・っていつの間に移動したんですか」
 蘭堂の前に顔をずいっと近づけるサターン。
「というわけで、蘭堂氏には非常に期待しているわけなのですよ」
「・・・顔、近いです」
 顔を離して、サターンは胸を張った。
 それを見ない振りして、再び作業に戻る蘭堂。真剣に相手をしたら、また時間の無駄になると判断する。
「・・・そういえば、けけは?」
「さあ?」
 コンソールからポンポンと音がする。蘭堂が覗き込む。
「あ、加工工場のほうに向かったみたいです」
「ん、じゃあ俺もそっちのほう見てくる。・・・後は任せた」
 急に真剣な顔になって言うサターン。
「はいはい」
 蘭堂はコンソールのほうを見ながら答えた。

水産物加工工場。
ナニワアームズ商藩国のそれは、この地下国家の水産物加工を一手に担う大工場である。養殖場から送られてきた魚を、ロボットアームがスピーディーにさばいてゆく。あっという間に缶詰やかまぼこ、その他水産加工物が出来上がっていった。
その工場の缶詰セクションの隅を、けけは歩いている。
「しっかし・・・これはすごいなあ」
「特に食品の安全には気を使っているからね」
 いつの間にかけけの背後に立っているサターン。びっくりして振り返るけけ。
「いつの間に来たんだよ!」
「ふはははは。それはサターン藩王88の秘密の1つだ」
 高らかに笑うサターン藩王。
「しっかし、これだけの稼働率もすごいですね。普段の倍ですか」
 けけ、華麗にスルー。
「全ラインが稼動しているからねえ」
 サターンとけけは上を見上げた。ベルトコンベアが次々に缶詰を運んでいく。鯖缶、秋刀魚缶、鱒缶、鯛缶、蟹缶、ウニ缶エトセトラ。
「・・・なんでも缶詰にすればいいってもんでも・・・」
「いいじゃん、おいしいし」
 
 水産加工工場倉庫。
 工場内からベルトコンベアで運ばれた水産加工物が、ダンボールに入れられて次々と積みあがってゆく。
「山のようですな」
 倉庫に積みあがったダンボールを見て、けけはそう口にした。
「でも、まだまだ足りないよなあ」
 隣に立って言うサターン藩王。
「備蓄15万トンですからねえ」
「怪獣肉のほうはどうなんかな?」
「サイボーグとパイロットが頑張っているんですよね?」
 アゴに手を当てて、サターンは思案気なポーズをとった。
「昨日見た限りでは、結構うまくやっていたけどねえ」
「じゃあ、大丈夫でしょ」
「うーん、ちょっと見てくるわ」
 そこまで気を回さなくても、と言おうとしてけけが横を見ると、すでに藩王はいなくなっていた。
「・・・あの人はテレポートでも使えるのか?」
 ため息混じりに独り言を言うけけ。
 一人しかいない倉庫、積みあがってゆくダンボール・・・。
「・・・むなしい・・・蘭堂さんのところにでも行こう」

 再び養殖場。
「蘭堂さん蘭堂さん、お昼にしません?」
「そうだね」
「ほらこれ、これ」
 蘭堂が振りかえると、缶詰を抱えたけけが立っていた。
「いいの?それ備蓄でしょ」
「いや、なんか、試作品だから食べていいって」
 倉庫からの帰りに水産加工工場長からもらったものだった。
「じゃ、もらおうか」
 作業台の上を片付けて、食事用のスペースを作る蘭堂。そこに並べられていく缶詰。
「缶詰だけで昼食って言うのも微妙だねえ」
「あ、この缶、白米ですよ」
「え?・・・ああ、ボタンを押すと炊き上がるのか・・・すごいなあ」
「ちなみにこっちが煮付け、そっちが味噌汁です」
「すごいねえ」
 感心する蘭堂。
「見た目缶詰だけど、なんか定食メニューじゃないか」
「戦地でも、やっぱりそういうものが食べたいんじゃないですか?」
「そうなんだろうね・・・戦争か」
 蘭堂は目を細めた。怪訝そうなけけ。
「どうしたんですか?」
「いや、みんな無事に帰って来れたらいいねって」
「・・・そうですね」
 沈黙。
「頑張りましょう。出来ることをやるしかないですよ」
「そうだね。うん、きっとそうだ」
 蘭堂は、何もかもが終わって、みんなが無事に帰ってこれることを、こころのなかでそっと願った。


(作成:くろがね)

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