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zoom RSS SS:紫藤晶佳の一日

<<   作成日時 : 2007/01/13 12:00   >>

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 紫藤晶佳は地下鉄が好きだった。
別に車両とか駅の名前に特別詳しいとかそういうわけではない。
地下鉄に揺られる時間が好きなのだった。

 だから急ぎでないときは今のようにわざと遠回りな路線に乗ってこの時間を楽しむのである。
いつもよりも人や猫で混雑した車内の雰囲気もアクセントに窓際の席に座って景色を眺めている。

地下鉄といっても、この国自体地下にあるため各階層内を行き来する路線では、こうして外の景色を楽しむことが出来た。

 晶佳の視線の先には今は観光客も少ない地底湖森林公園があった。
地底湖養殖場から加工工場へと運搬するためか、水揚げした養殖魚を駅まで運搬するトラックが見える。
私、あんまり魚は好きじゃないんだけどなぁ、水棲地底海獣はエビみたいな味でおいしいけど。と考えたところで景色が途切れた。
市街地を抜け、各階層を繋ぐ連絡線路に入ったのである。


 第2階層2番駅で列車を降り、改札を抜けてから、うーんと背伸びして身体をほぐす晶佳。
列車を降りた後の開放感も好きなのだった。
長くのばした銀髪をかき上げて目的の工場へと歩き出す。

 いつにも増して人と物が行き来する工場地帯を慣れた足取りで進み、たくさんある工場や倉庫の中でも一際大きな建物の前でその足は止まった。
見上げるその建物には紫藤総合食品第5解体処理場と書かれている。
 機材の詰まった段ボールを抱えた作業員の一人が彼女に気づき、近づいてきた。

「社長。おはようございます。今日も視察ですか」
「ええ。また怪獣が捕獲されたって聞いたから。これで7体目だったかしら?」
「さっき8体目が届きました。大物のフィッシュ・ヘッド・ヒュドラですよ」
 作業の手を止めて案内を申し出る作業員に大丈夫と告げて処理場内に入る晶佳。
魚の生臭さに似た臭気にちょっとくらくらしながら入り口に備え付けてある匂い防止用マスクをつける。
にゃんにゃん共和国では珍しい魚が苦手な彼女にはマスク越しでもちょっとしんどい。
怪獣の臭いなら全然気にならないという人だったが、魚に似た生臭さはやはり苦手なのだった。

 処理場内では巨大な怪獣の解体作業真っ最中である。
大型重機に作業用I=D、解体作業用ロボットから人力まで。
ありとあらゆる手段を用いて解体作業が進められている。

 怪獣はかなりの巨体である。
小さいものでも全長10m程度はあり、大きいものになると100mを越える。
そんな怪獣を新鮮さを保ったまま加工工場に送り出すには迅速な解体が必要なのだった。
 先ほど運び込まれたというこの怪獣もすでに全体の3割程度が解体され、少し離れたところで冷凍コンテナへの積み込み作業が行われている。

 そんな風景を横目に、晶佳は解体作業を指揮している初老の現場監督の元へ向かった。
「ご苦労様です。作業は順調そうですね」
「おう、社長さんかい」
 現場監督はナニワ人にしては珍しく気っ風の良い江戸っ子気質だった。
作業の手を止めて晶佳に挨拶する作業員達に喋ってねぇで仕事しろ馬鹿野郎ども、とよく通る声で怒鳴りつける。

「とりあえず作業は進んでるが、機材も人も騙し騙し使ってるってのが現状だ。食料増産命令が出ているとはいえ、さすがの俺も24時間で8体解体したのは初めてだからなぁ。このペースの維持は正直、難しいな」
「すみません。ですが、国内の食料品販売最大手の紫藤総合食品としては食料増産命令が出た今、少しでも多くの食料を供出しないといけないんです」
「そりゃあわかっちゃいるがね。まぁ、ともかく出来る限りはやるつもりだ」
「お願いします。それから、解体した怪獣の骨や甲殻系の表皮は第3階層の方に回してください」
 あん?、と瞬きする現場監督。晶佳は解体作業に目をやりながら応える。
「加工して建材やアイドレス用の資材として輸出します。それで得た外資で食料を買い付ければ少しは楽になるわ」
「そりゃあ構わんが。しかし、社長。あんたの一存でそんなにすぐに輸出なりなんなりなんて出来るのかい?」

 晶佳はマスク越しでもわかる微笑を浮かべて答えた。
「ええ。藩王に直談判してきますから」

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「と、いうわけで。資材の輸出を認めてください」
「うん、それはいいんだけどさ。晶佳たん?」
「その呼び方はやめてください。なんですか」
「顔、近いんだけど」
 藩王執務室。なぜか設置されたこたつで仕事していた藩王サターンを晶佳が強襲、もとい、謁見していたのである。こたつに両手をついて眼前5cmまで詰め寄っていた晶佳は、なぜか表情が変わらないはずの完全義体なのに変な顔してるとわかるサターンから離れてこたつに入り直す。
きっともともと変な顔なのね、と納得することにしたのだった。

「まぁ、あれだ。色々ごめんねぇ。無理させちゃってるみたいで。怪獣食品は我が国の主な食料源だからさ」
「天領からの指示では仕方がありませんよ。食料を規定以上生産しないと藩国崩壊ですから。それに、この増産計画でますます我が紫藤食品のシェアは拡大されたわ」
「怪獣の骨とかを資源に回すってやつだね。うん、悪くないし、金もないから速攻承認なんだけど、これで今度はアイドレスが生産できなくなっちゃったんだよなぁ。資源不足で」
 ああー、ドリルが遠のいてゆくー。とぼやくサターンに晶佳はため息で答えた。
膝の上にごろんちょしようと隙を窺っていた王猫トラさんを捕まえて喉をこしょこしょする。
いにゃーん、ごろごろ、と嫌がりながらも気持ちよさそうにするトラさん。

「だったらもう少し計画的に資産運用してください。だいたい、今の状態でアイドレス工場を建設する余裕があるとお思いなんですか、おじさまは」
「いや、ぜんぜん。ああ、でもドリルー。ドリルぅ〜♪」
「なんで歌うんですか」
「ギャグだよ、ギャグ。ああっ、ナニワ人なのにユーモアを介さないなんて晶佳たんがぐれたぁ!」
 嘘泣きをはじめたサターンにたんはやめてってば!とみかんを投げつける晶佳。悪夢のような正確さで馬鹿笑いをあげながら回避するサターン。みかん嫌なのー、と部屋の隅っこに逃げるトラさん。

 ムキになった晶佳と愚王の攻防は5分間ほど続いた。


(作成:サターン)

作者より。
今回は実験的にプレイヤーのいないNPCメインでSS書いてみました。
うちの藩国関係でSS書く時はこのNPCを適当に使っちゃってOKですよ。

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